「あれ、採点表ってXに出していいやつなの?」
ボクシングを見るようになってしばらくたったある日、試合翌日にタイムラインを開いたら3人のジャッジの採点が全部載ってる画像が流れてきて、正直最初は「え、これ見せていいの?」って思いました笑
でも今では当たり前の光景になりましたよね。プライムビデオさんが「スコアシート公開!」ってXに上げたり、ボクシングビートさんが採点表の画像を投稿したり。
じゃあこれって、いつから・なぜ・誰が出してるの?というのを今日は深掘りしていきます。
🥊 そもそも採点表って何が書いてあるの?
まず簡単に整理します。ボクシングのプロの試合では、3人の審判員(ジャッジ)が「10点マスト制」という方式でラウンドごとに採点しています。
勝ったほうに10点、負けたほうに9点(ダウンを奪ったりすると差がつく)というルールで、12ラウンドの試合なら最大120点。3人の採点がそのまま「スコアカード」になって残ります。
試合後にXやメディアで見る「117-111」とか「115-113」という数字は、この3人それぞれのスコアカードの合計点です。誰が何ラウンドで何点をつけたか、全部記録されています。
![]() 初心者くん |
3人のジャッジが全員違う採点をすることもあるんですよね?同じ試合を見てるのに… |
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当たり前だ。人間が採点してるんだから、見方次第でズレる。だからこそ採点表を「誰でも見られるようにする」ことが重要なんだろ。ジャッジが密室で何点つけても誰にもわからない、じゃ困るだろ。 |
![]() トレーナー |
🥊 「途中公開」と「試合後公開」は別の話
ここで一つ大事な整理があります。採点表の「公開」には2種類あって、混同するとわかりにくくなります。
① オープンスコアリング(試合中の途中公開):試合中に、4R終了後・8R終了後など決められたタイミングで、その時点の採点をリングアナが読み上げて場内に公開する制度。
② 試合後のスコアカード全体の公開:試合が終わった後、3人のジャッジが12ラウンドつけた採点の全記録を外部に開示すること。これがXで流れてくる「採点表」の正体です。
今日の本題は主に②ですが、①の歴史も深く絡んでいるので両方触れます。
🥊 採点表が「表に出る」ようになった歴史
▶ 原点:採点表はもともと「公文書」だった
実はアメリカでは、ずっと前から採点表は「公式記録(public record)」として州のアスレチックコミッションが保管しています。ネバダ州アスレチックコミッション(NSAC)などは試合後の採点表を正式な行政記録として管理しており、情報公開請求(FOIA)を出せば誰でも取り寄せられる仕組みです。
つまり「秘密にされていたものが公開されるようになった」というより、もともと公の記録だったものが、SNSの普及でいきなり多くの人の目に届くようになった、というのが実態に近いです。
▶ 2006年:亀田興毅戦の物議がWBCを動かした
途中公開(オープンスコアリング)の歴史は1999年にWBAが試験導入したのが最初ですが、当時は「ジャッジへのプレッシャーが大きすぎる」「ファイターの戦略に影響する」という反対意見が多く、本採用には至りませんでした。
転機になったのが2006年8月の亀田興毅vsファン・ランダエタ戦です。日本中が「え、亀田の勝ち?」となったあの試合ですね笑 あの判定に対する批判が国内外で高まったことで、WBCは同年11月の年次総会でオープンスコアリングの採用を決定。12日後の11月13日(長谷川穂積vs ヘナロ・ガルシア戦)から実際に運用が始まりました。
これがボクシングの採点を「ガラス張りにしていく」流れの、大きな出発点の一つです。
![]() 初心者くん |
亀田戦がきっかけになってたんですね!長谷川穂積さんの試合からって、結構早かった… |
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WBCが動く時は大体「不可解な判定が話題になった後」なんだよな。ファンが怒らないと変わらないのは今も同じだろ。 |
![]() トレーナー |
▶ 2017年:カネロvsGGGの「118-110」が世界を動かした
採点の透明性に対する世論が爆発したのが、2017年9月のカネロ・アルバレスvsゲンナジー・ゴロフキン①です。
誰もがGGGの優勢を感じた試合で、結果はまさかのスプリット・ドロー(引き分け)。「それ自体もびっくりだったのに、もっと驚いたのが採点の内容でした。ジャッジのアデレード・バードが「118-110」でカネロを支持していたことが明かされると、世界中のボクシングファンが「いやそれはさすがにおかしい」と燃え上がりました笑
バードはネバダ州アスレチックコミッションによって職務停止処分を受け、「採点表を試合後に公開・検証することの重要性」がボクシング界全体で強く意識されるようになりました。
ここからプロモーターや放送局が「試合後に採点表をそのまま公開する」流れが一気に加速します。WBAも公式サイトに「Master Scores」という採点アーカイブページを開設し、過去の試合のスコアカードが誰でも確認できる場所を用意しました。
▶ SNS時代:放送局が積極的に公開するように
2020年代に入ってSNSが成熟してくると、試合後のスコアカードを画像でXに投稿するのが放送局・プロモーターの「当たり前のコンテンツ」になってきました。
日本でわかりやすい例が、プライムビデオスポーツJP(@pvsportjp)です。「スコアシート公開」というハッシュタグと一緒に採点表の画像を投稿するのがもはや定番になっていますよね。「あのラウンドはどちらに入っていたのか?」という視聴者の疑問に答えるコンテンツとして機能しています。
ボクシングビートなどの専門メディアも同様に採点表を公開しています。これは「放送局・メディアがコミッションから採点表を取り寄せて公開している」のが実態で、法的にも問題のない形での情報公開です。
🥊 「出ていいの?」→ 出ていい。むしろ出すべきもの
採点表は「漏れた情報」ではなく、コミッションが正式に管理する公式記録です。それをプロモーター・放送局がコミッションから受け取って公開しているので、法的にも倫理的にも完全に問題ありません。
むしろボクシング界の方向性は「もっと積極的に公開すべき」です。採点表が公開されることで、
- どのジャッジがどのラウンドを誰に入れたかが明確になる
- 「不可解な採点」をしたジャッジが特定できる(=説明責任が生まれる)
- ファンが自分の採点と比べて楽しめる
逆に「採点を隠す」文化がずっと続いていたことの方が問題だったとも言えます。
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そもそも公文書なんだから、見せるのが当たり前なんだよ。ジャッジが「密室の神様」みたいになってた時代の方がおかしかったんだ。今の方が健全だろ。 |
![]() トレーナー |
🥊 日本(JBC)の状況は?
JBC(日本ボクシングコミッション)は、2013年から日本タイトルマッチで公開採点制度(オープンスコアリング)を本採用しています。10ラウンドの試合なので5R終了後の1回だけ採点を読み上げる形です。
ただし「試合後にスコアカード全体を公開する」という制度については、JBCとしての明確なルールは現状見えていません。プライムビデオなど放送権を持つ局が独自に公開しているケースが目立つ状況です。
世界タイトルマッチはWBCルールやIBFルールに従うため、開催国コミッション次第で公開採点が実施されたりされなかったりします。2022年の井上尚弥vsノニト・ドネアの統一戦では、当日になってWBC以外の団体から異論が出て、予定していた公開採点が急きょ中止になるという事態もありました。まだまだ「全団体が足並みを揃えた透明な運用」には至っていないのが現状です。
![]() 初心者くん |
井上vsドネアで当日に中止になったのは驚きました。そもそも統一戦って団体ごとにルールが違うから難しいんですね… |
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4団体が「俺たちのルールが正しい」って言い続けてる限り、こういう問題は解決しないんだよ。統一性のなさがボクシングの課題の一つだ。 |
![]() トレーナー |
🥊 採点表が公開されても「疑惑の判定」はなくならない
採点表が公開されるようになって透明性は確実に上がりましたが、「だから不可解な判定が減った」かというと…正直、そうとも言えないのが難しいところです笑
採点表が全部見えることで「このジャッジはいつもおかしい」「この団体の認定ジャッジは信頼できない」というデータは蓄積されていきます。でもジャッジの選定・資格制度・処分のルールはいまだ各コミッション・各団体に委ねられており、説明責任のシステムが十分に整備されているとは言えない部分もあります。
「採点表を公開すること」は透明化の第一歩であって、ゴールではない。そこから先——ジャッジの評価制度・資格の統一・処分の明確化——をどう進めるかが、ボクシング界にとって残された課題だと思っています。
- 採点表は米国では元々「公文書」。情報公開請求で誰でも取り寄せ可能な公式記録だった
- 2006年に亀田興毅戦をきっかけにWBCがオープンスコアリング(途中公開)を導入
- 2017年のカネロvsGGG①でバードの「118-110」炎上事件が透明性への要求を爆発させた
- 2020年代にSNSが成熟し、放送局・プロモーターが「採点表の試合後公開」を当たり前のコンテンツにした
- 採点表は「漏れ情報」ではなく正式な開示。出していい、出すべきもの
- 日本(JBC)は2013年から日本タイトルで途中公開を本採用。試合後の全採点開示は放送局に委ねられている部分が大きい
- 公開されても「疑惑の判定」は完全にはなくならない。透明化はあくまでスタートライン
採点表がXに流れてくるたびに「どのラウンドで差がついたか」を確認するのが習慣になったファンは私だけじゃないと思います。
ぜひ次の試合でも、試合中の自分採点と公式スコアカードを見比べてみてください!




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