井上尚弥のベルトに一番近い男が決まった G・アントニオ・ラッセルがWBAスーパーバンタム級暫定王座を獲得 最終回にダウン奪う大差判定

試合結果速報

ラスベガスのビッグイベントというと、どうしてもメインの話ばかりになりがちなんですけど、今回は日本のファンにとってセミ前のほうが大事かもしれません。

8月22日(日本時間23日)、T-モバイル・アリーナで行われたWBA世界スーパーバンタム級暫定王座戦。暫定王者ビクター・サンティリャンに、同級4位のゲーリー・アントニオ・ラッセルが挑み、12回3-0の大差判定でベルトを奪いました。しかも最終回にダウンを奪ってのフィニッシュ付きです。

この階級の正規王座(WBAスーパー王座)を持っているのは、言うまでもなくスーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥。つまりラッセルは、制度上「井上のベルトにいちばん近い場所」に立ったことになります。

ゲーリー・アントニオ・ラッセル

🏆 ゲーリー・アントニオ・ラッセル(米・メリーランド州)

VS
ビクター・サンティリャン

🥊 ビクター・サンティリャン(ドミニカ共和国)

🥊 試合結果

日時・会場 2026年8月22日(日本時間23日) T-モバイル・アリーナ(米ネバダ州ラスベガス)
タイトル・階級 WBA世界スーパーバンタム級暫定王座戦(12回戦)
勝者 ゲーリー・アントニオ・ラッセル(米国)=新暫定王者
敗者 ビクター・サンティリャン(ドミニカ共和国)=前暫定王者
決着 12回3-0の判定(12回にダウン奪取)
WBA世界スーパーバンタム級暫定王座 / 2026年8月22日
🏆 G・アントニオ・ラッセル
22勝(13KO)1敗1無効試合
VS ビクター・サンティリャン
16勝(7KO)3敗
判定3-0(12R) / T-モバイル・アリーナ(ラスベガス)

🥊 ジャッジの採点

ジャッジ ラッセル ✓ サンティリャン
ドン・トレラ(米) 119 108
ジョン・マッカーシ(米) 119 108
マックス・デルーカ(米) 118 109

※レフェリーはロバート・ホイル氏。なお興行主が公表した数字とはわずかに表記の差があり、確定値はBoxRecへの掲載確認後にあらためて追記します。

🥊 ラウンドごとの流れ

1〜3R サウスポー同士。接近してワイルドなパンチを振り合っては揉み合う展開が続き、3回には早くもレフェリーが両者に注意を与えるほど荒れた立ち上がりに。
4R 前に出るサンティリャンのパンチをラッセルがいなし、ボディ攻撃からの左をきれいに当てる。ここで流れが傾き始める。
5〜8R 先に仕掛けるのはサンティリャン。しかしラッセルは体を寄せてヒットを許さず、巧みなクリンチで攻撃を分断。泥臭い展開ながらペースはラッセルが握り続けた。
9〜11R 9回にラッセルがジャブを使い出し、左ストレートを打ち込んでは低い姿勢でクリンチ。11回は足を使いながら左ストレートと右フックをカウンターで返し、老獪さを見せつけた。
12R 開始早々、ラッセルの右フックがテンプルを直撃しサンティリャンがダウン。再開後もラッセルはフィニッシュを狙ったが、サンティリャンはクリンチでピンチを脱して終了ゴングを聞いた。

🥊 「もうひとりのラッセル」がついに世界の入口へ

ラッセル兄弟、と聞いてピンとくる方も多いと思います。メリーランド州キャピトルハイツ出身のこの一家は、父ゲーリー・ラッセル・シニアが自宅の地下室で息子たちにボクシングを教えたことから始まりました。ジムのコーチを雇うお金がなかったので、自分で教えるしかなかったそうです。

そこから兄弟4人が全米ゴールデングローブを制覇するという、ボクシング史でも前例のない偉業を達成。長兄のゲーリー・ラッセル・ジュニアは2015年から2022年までWBC世界フェザー級王座に君臨し、ゲーリー・アントワン・ラッセルはWBA世界スーパーライト級のベルトを巻いています。

その中で、今回のアントニオだけがずっと世界王座に手が届いていませんでした。元IBF世界バンタム級王者エマヌエル・ロドリゲスに敗れたのが唯一の黒星で、そこから積み上げ直しての33歳での戴冠。「暫定」とはいえ、彼にとっては初めて手にした世界のベルトです。

そして父シニアは2022年5月、63歳でこの世を去っています。試合後、アントニオが真っ先に語ったのが父のことでした。

「父さんが俺たちに与えてくれたすべて……。彼のために前に進み続けなきゃいけないんだ」—— ゲーリー・アントニオ・ラッセル(WBA暫定王座獲得後)

🥊 で、これは井上尚弥にどう効いてくる?

初心者くん
初心者くん
あの…そもそも「暫定王座」って何なんですか? 井上選手がWBAのベルトを持ってるのに、どうしてもう1本あるんでしょう?

簡単な話だ。王者がケガだの、でかい試合の準備だので長いこと防衛戦をやらねえと、下のランカーは順番待ちで干上がっちまうだろ。だから団体が「仮のベルト」を作って回す。それが暫定王座だ。

トレーナー
トレーナー
初心者くん
初心者くん
じゃあラッセル選手は、そのまま井上選手に挑戦できるってことですか?

そう急ぐな。制度上は近い位置に立った、ってだけだ。実際にどう扱うかは団体の裁定次第だし、井上が階級を上げりゃ話はまるごと変わる。今の時点で「次の挑戦者が決まった」なんて言うのは早すぎるに決まってんだろ。

トレーナー
トレーナー

トレーナーの言うとおりで、ここは慎重に見ておきたいところです。現時点でWBAから「ラッセルを井上の指名挑戦者とする」といった発表は確認できていません。

ただ、井上の次戦はジェシー・バム・ロドリゲスとの一戦が2027年2〜3月に日本でという大きな計画が動いている段階で、しかも本人はフェザー級転向の可能性も示唆しています。122ポンドの正規王座がしばらく動かないのだとしたら、この暫定王座の価値はじわじわ上がっていくはずです。

ちなみに同じスーパーバンタム級では、IBFの暫定王座決定戦として9月27日に六島ジムの西田凌佑とサム・グッドマンが対戦することも決まっています。井上が動かない間に、周りのベルトだけがどんどん動いていく。この構図、当面は続きそうです。

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こちらは試合後、亡き父について語るラッセルの映像です。

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正直に言うと、内容自体は「面白い試合」ではありませんでした。クリンチが多く、噛み合わない12回。ただ、それを承知のうえで確実に勝ち切ったのがラッセルだったのも事実です。33歳でようやく掴んだ最初のベルトを、亡くなった父に捧げるという一夜。派手さはなくても、こういう試合こそボクシングだよなあと思いながら見ていました。井上尚弥がスパーリングを開始したという話題の裏側で、122ポンドの椅子取りゲームは静かに動き続けています。

📌 まとめ

ゲーリー・アントニオ・ラッセルが12回3-0の大差判定でビクター・サンティリャンを下し、WBA世界スーパーバンタム級暫定王座を獲得しました。最終回のダウンで締めた完勝で、戦績は22勝13KO1敗1無効試合。ラッセル兄弟で3人目の世界王座(暫定)到達であり、亡き父に捧げる一勝でもありました。井上尚弥の正規王座にどう絡んでくるかは今後のWBAの判断次第ですが、日本のファンとしては覚えておいて損のない名前です。

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